なぜ試合前は“静的”ではなく、“動的”ストレッチなのか
まず、体の柔軟性について考えてみましょう。
試合や運動中、体は常に動いています。
筋肉も「縮む・伸びる」を繰り返しながら使われています。
そのため、試合や運動中に求められるのは、
止まった状態での柔軟性ではなく、「動きの中で使える柔軟性」です。
次に、ストレッチの種類について見ていきます。
静的ストレッチは
・同じ姿勢を保持してゆっくり筋肉を伸ばしてキープするストレッチ
・体を休ませるストレッチ
効果:体をゆるめる、柔らかくする、疲れをとる、リラックスするなど
向いているタイミング:運動後、お風呂後、寝る前など
それに対して
動的ストレッチは
・体を動かしながら筋肉を伸ばすストレッチ
・体を動ける状態にするストレッチ
効果:筋肉を温める、可動域を広げる、ケガを防ぐ、パフォーマンスを上げるなど
向いているタイミング:運動前、試合前など
このように動的ストレッチは、体を動かしながら行うストレッチです。
実際のプレーに近い状態で体を準備できるため、運動前に適しています。
つまり、
運動前は「止まって伸ばす」静的ストレッチよりも、
「動きながら体を準備する」動的ストレッチが大切なのです。
試合前ウォーミングアップの理想的な流れ
試合前におけるウォーミングアップとしては、いきなり動的ストレッチをするのではなく、以下の流れで行うことが望ましいです。
- ジョギングなど軽運動で体温の上昇・血流の改善を目指す
- 体温が上昇したところで、動的ストレッチを実施
※小さい動きから徐々に大きくすることが望ましい - スポーツ動作に合わせたウォーミングアップを実施
※スプリント・ジャンプ・アジリティなど試合でよく使う動作を取り入れよう
ウォーミングアップ全体で15分程度は行うことで、筋肉の準備だけではなく、心肺機能の準備もできます。
短いと試合で呼吸が乱れやすくなるため、十分なウォーミングアップの時間を確保するようにしましょう。
試合前に行いたい動的ストレッチメニュー
1. キャット&ドッグ
下記の動作をゆっくり10回程度繰り返す
- 四つん這いになり、背中を真っ直ぐに保持
- 両手で床を押しながら、へそを覗き込むように背中を丸める
※呼吸を吸いながら行う - 顔を上げながら、背中を反らす
※呼吸を吐きながら行う
2. インナーサイグローンストレッチ
下記の動作をゆっくり10回程度繰り返す
- 四つん這いになり、背中を真っ直ぐに保持
- 片側の足を股関節の真横へ伸ばす
※横に伸ばした足の足裏を床につける - 背中を真っ直ぐに保持したままお尻を後ろに引く
※この時に内ももが伸びていれば、正しくできています
3. ポステリアーカプセルストレッチ
下記の動作を左右10回程度繰り返す
- 四つん這いになり、背中を真っ直ぐに保持
- 片側の脚(1)をもう片方の脚(2)に交差するようにおく
- (1)側の臀部を後外側へ移動させる
※骨盤が並行に保たれた状態で行うこと
4. オープンチェスト
下記の動作を左右10回程度繰り返す
- 四つん這いになり、片方の手を耳の横に置く
- 手を耳に置いた側の胸を開くように身体を捻る
5. エルボーダウン&ハイリーチ
下記の動作を左右10回程度繰り返す
- 腕立て伏せの体勢となる
- 片方の足を手の横まで出す
- 前に出した足側の肘を床につける
※この時に足裏が床から浮かないこと - 肘を床につけた後、今度は同じ手を天井の方へ伸ばす
6.ワーム
下記の動作を5回程度繰り返す
- 腕立て伏せの体勢となる
- 足はそのままでバンザイをするように手を前(頭側)へ移動する
- 姿勢を保持したまま足を手に近づけていく
※この時に足関節だけで動作すること
7. エアプレーン
下記動作を左右10回程度繰り返す
- 片足立ちとなる
- 軸足側の股関節を曲げ、身体を床と平行にしていく
※この時に身体と浮いてる脚が一直線となるようにする
※軸足側の膝は軽く曲がっていても良い
動的ストレッチの注意点
動的ストレッチは前述の通り、動かしながらストレッチをするため、最初から急激に大きく動かしてしまうと怪我をするリスクがあります。
・身体を温めてから行うこと
・徐々に大きな運動に変えていくこと
・反動をつけるのは最終段階で行うこと
などを十分に注意して実施するようにしましょう。
またチームでの集中力の向上、一体感の向上など気持ちの準備をするために
「リズムを揃える」こともチーム全体の競技力を上昇させるコツともなります。
競技別のアレンジ例
軽運動 → 動的ストレッチ → スポーツ動作 の順序は基本的にはどの競技でも大きな違いはありません。
その中身で競技特性を踏まえて組み合わせてみましょう。
例えば
バスケットボール
低い姿勢で切り返しが多く、攻守の切り替えが速い
動的ストレッチ :足関節・股関節の可動域を大きく広げることを重点的に
スポーツ動作 :スプリント、ステップワーク、ジャンプ、アジリティ要素を組み込む
サッカー
他の競技特性と大きく異なるのは足を用いること
動的ストレッチ:股関節周辺の可動域を大きく広げることを重点的に
スポーツ動作 :下肢の神経伝達速度を向上させること
野球
回旋動作が必須で、特にピッチャーやキャッチャーでは投動作が多くなる
動的ストレッチ:胸部の回旋可動域の向上、肩関節の可動域の向上
スポーツ動作 :胸部の回旋動作と肩関節・下肢の協調性を向上させること
どの競技においてもポジション別でも特性が異なるため、
チームのアップとは別で個人でもさらに必要なストレッチやウォーミングアップを取り入れてみよう!
測定事業
カラダスコア
〜 測って、わかって、強くなる 〜

まとめ
ストレッチと一言で言っても、種類によって得られる効果は異なり、奥深いものです。
育成年代の選手たちが、自分で考えて動的ストレッチやウォーミングアップを組み立てることは、簡単ではありません。
だからこそ、選手を支える指導者や保護者が正しく理解し、わかりやすく伝えていくことが大切です。
どのような準備が必要かがわかってくると、選手自身も少しずつ「自分で考えて選ぶ力」を身につけていきます。
動的ストレッチやウォーミングアップを、チームや競技に合わせて工夫しながら取り入れていきましょう。
それが、パフォーマンスの向上やケガの予防につながっていきます。
準備の質が変われば、プレーは変わります。
ぜひ今回の内容を、日々のウォーミングアップに取り入れてみてください。


