「今日も出られなかった…。」 試合が終わった後、ユニフォームを着たまま静かに荷物を片付ける我が子の姿を見て、胸が締め付けられた経験はありませんか。
育成年代のバスケットボールでは、全員が同じように試合へ出場できるわけではありません。努力を続けても結果が出ない時期もあれば、思うように評価されない時期もあります。
そんな時、一番苦しいのは子ども本人ですが、その姿を一番近くで見ている保護者もまた、大きな葛藤を抱えています。補欠期間を「ただ我慢する時間」ではなく「成長する時間」に変えるために、親はどのように関わるべきなのかをお伝えします。
「なぜうちの子は出られないの?」——試合を見続ける親の本音
保護者が感じる「何もできない無力感」とは
試合中、ベンチで仲間を応援する子どもの姿を見るたびに、「もっと出してあげてほしい」「こんなに頑張っているのに」といった思いが込み上げるのは自然なことです。
私自身、多くの保護者から「家では誰よりも努力しているのに」「練習でも頑張っているのに」というご相談を受けてきました。親だからこそ、陰で努力している姿を知っています。だからこそ納得がいかない気持ちになるのは、決して悪いことではありません。
しかし、その感情をそのまま子どもへ向けてしまうと、子どももまた「自分は認められていない」と考えてしまいます。親が苦しい時ほど、子どもはもっと苦しんでいるという事実を忘れないことが大切です。
補欠期間に何が育っているか
試合に出ている選手は目の前のプレーに集中していますが、ベンチにいる選手だからこそ見える景色があります。
- 相手の特徴や傾向
- 試合の流れの変化
- 仲間の良いプレー
試合を客観的に見る力は、将来プレーする時の大きな判断力につながります。また、仲間を本気で応援する経験は、チームスポーツだからこそ身につく大切な力です。
「自分が下を向いていてはチームのためにならない」という気持ちが芽生えた時、子どもはプレーヤーとしてだけでなく、一人の人間としても大きく成長しています。
試合に出場する時間が短い時期は、基礎技術や身体づくりに集中できる貴重な時間でもあります。
- 体幹の強化
- 姿勢の改善
- ジャンプやストップ動作の習得
試合数が少ないからこそ、疲労を抑えながら身体の土台を作ることができます。育成年代におけるこの「土台」が、将来の伸び幅を大きく左右します。
実際、大きく成長した選手の多くが「補欠時代」を経験しています。理由は単純で、悔しさを経験した選手ほど自分で考え、努力する習慣が身につくからです。
もちろん全員がそうなるわけではありません。しかし、補欠だったこと自体が将来を決めるのではなく、「その時間をどう過ごしたか」が未来を決めます。
やってはいけない親の関わり方3つ
① 試合直後にアドバイスや評価をする
試合直後は子ども自身の感情が整理できていません。技術的な話よりも、「お疲れさま」の一言だけで十分な日もあります。
② コーチへの不満を子どもの前で口にする
指導者への不満を話すことで、一時的に子どもの気持ちは楽になるかもしれません。しかし、子どもの意識が「自分が変わること」ではなく「周りが悪い」に向いてしまい、成長につながりません。
③ 「もっと積極的に」と焦らせる
一番焦っているのは子ども本人です。親がさらに焦らせれば自信を失ってしまうため、子どもの努力を認め、安心できる居場所を家庭につくることが大切です。
シーン別・親の声かけ実例
| シーン | 声かけの実例と意識したいポイント |
| 試合に出られなかった日の帰り道 | 「悔しかったね。」 まずは子どもの気持ちをそのまま受け止めましょう。アドバイスよりも共感することが大切です。 |
| 練習でミスが続いて落ち込んでいるとき | 「失敗しても挑戦している証拠だよ。」 結果ではなく挑戦した姿勢を認める言葉が、次の行動へつながります。 |
| 「バスケ辞めたい」と言い出したとき | 「そう思うくらい苦しかったんだね。」 無理に励ます必要はありません。まずは話を聞いてあげることが一番大切な役割です。 |
チームの保護者に聞いた「あの頃の本音」
保護者Aさん「補欠時代があったから今がある」
Bチームで過ごしていた頃、息子は本当に苦しんでいました。何度も「もうバスケットを辞めたい」と相談され、そのたびに親として何と声をかければいいのか分からず、一緒に悩み続けたことを今でも覚えています。
試合に出られない現実は、子ども以上に親の方が受け入れられなかったのかもしれません。「どうしたら試合に出られるのだろう」「何か親としてできることはないのだろうか」ということばかり考えていました。
ですが、今振り返ると、息子が変わったきっかけは親が何か特別なことをしたからではありませんでした。ある日、息子が「自分がチームを支えて、もっと強いチームにしたい」と口にしたことを境に、少しずつ行動が変わっていったのです。
家では自分のプレーの話だけではなく、「○○にはこんな声をかけた方がいいかな」「チームがもっと良くなるには何が必要なんだろう」と、周りの選手をどう成長させるかを考えるようになりました。
3年生になった時、監督が「チームには技術だけではなく必要な人間がいる」と話し、息子はベンチメンバーに選ばれました。仲間を支え、チームのために行動し続けた姿勢が監督の目に留まっていたのかもしれません。あの補欠だった時間は決して遠回りではなく、一人の人間として大きく成長できた貴重な時間でした。



今振り返って「やっておけばよかった」こと
子どもが試合に出られず、バスケットを諦めかけていた時期、私は励ましているつもりで一緒になってチームや指導者を批判してしまいました。
「あの采配はおかしい」「もっと使ってくれてもいいのに」といった言葉は一時的に子どもの気持ちを軽くしたかもしれませんが、子どもの視線を「自分が成長すること」ではなく「周囲が悪い」という方向へ向けてしまっていました。
本当に必要だったのは、一緒に不満を言うことではなく、「今できることは何だろう?」と未来へ目を向けられるよう支えることだったと感じています。あの時もっと子どもの可能性を信じて見守ることができていたら、ということが私の一番の反省です。
まとめ|子どもの未来を信じて「見守る」こと
子どもが試合に出られない時間は、親にとっても試される時間です。「守ってあげたい」「何とかしてあげたい」と思うのは当然の親心ですが、その壁を乗り越えるのは子ども自身になります。
親が問題を解決することよりも、「あなたなら乗り越えられる」と信じて見守ることが子どもの成長につながります。補欠だった時間は決して遠回りではなく、努力を続ける力、仲間を支える力、困難に立ち向かう力を育てる大切な時間です。
今の時代だからこそ、私達大人に求められるのは子どもを「守る」ことではなく「見守る」ことです。子どもの未来を信じ、成長を待てる親こそが、子どもの可能性を最も大きく伸ばせる存在になります。


